新型コロナウイルス感染症の影響下であっても、地域のつながりを創出する三条神楽の文化と活動継続を目指しています。寄附いただいた方には、疫病退散を由来する絵馬をリターン品とし、新型コロナウイルスからの回復を願掛けしています。
新型コロナウイルス感染症拡大の懸念より、各地域を彩るお祭りが相次いで中止や縮小されています。三条市の郷土芸能についても同じ。
江戸時代後期(1811年)から、三条町八幡宮で舞い踊られてきた新潟県指定無形民俗文化財「三条神楽」は、春と秋、年2回のお祭りの演目について変更せざるをえませんでした。さらに、郷土芸能を伝えるための「三条かぐら鑑賞会」では、3密を避けるために人数制限を行うなど、文化の危機ともいえる事態に陥っています。
「三条神楽をきっかけに、新しい日常を取り戻すきっかけを」と、三条つなぐプロジェクトへの思いを語るのは三条神楽保存会の会長である石月恒雄さんと、神明宮の神主を務める三上正行さん。三条市におけるお祭りの役割、そしてコロナ禍だからこそ三条神楽に思うことを聞きました。
疫病退散からの伝承「三条神楽」の由来
▲1966年3月に、新潟県指定無形民俗文化財に指定された三条神楽。
三条神楽とは、三条市内にある八幡宮、諏訪神社、中山神社、小布勢神社、神明宮、白山神社の6社に伝わる神楽の総称です。主に、出雲神楽系統を代表する神話をモデルにしているため、能や狂言からも影響を受けた演目などが披露されています。
出雲から新潟へと伝承されてきた三条神楽は、これまで疫病との密接な関わりがあります。京都で当時、蔓延した疫病を払うためにとつくられた「宝剣作の舞」など、32ある三条神楽の演目には、疫病退散を起源とするものが多いそうです。
▲三条神楽を披露する6つの神社のひとつ「神明宮」で取り組みを伺った。
ときを現在に戻し、日本中で蔓延する新型コロナウイルス感染症を乗り越えていくために。三条神楽保存会では、三条神楽を中止するではなく、安全性を考慮した新しい形の地域のお祭りとして開催を目指しています。
「文化を無くさない」三条神楽を伝え続ける意義
▲これからの三条神楽について模索する三条神楽保存会会長の石月恒雄さん(左)と神明宮神主の三上正行さん。
三条神楽保存会ではお祭りでの演目披露と共に、2020年10月4日に中央公民館で開催する三条かぐら鑑賞会を準備しています。
三条かぐら観賞会ではこれまでの歴史や言い伝えを振り返りながら、三条神楽を自分ごととして身近に感じてもらえるように工夫してきました。加えて三上正行さんは、観賞会での解説について「自分ならではの所感を交えながら伝えています」と言います。
「古文書に書かれていない三条神楽の神話などの伝聞の歪みを大事にしています。歴史への探究心というか、それぞれの時代に生きた人たちの物語があってこそ。
当時、インターネットですぐに情報を調べられるわけではないですよね。それが現代まで言い伝えとして伝わっているのは……きっと言い伝えにバックグラウンドがあって、何かを伝えたかったのだと想像できるから。私たち、踊り手たちも同じで、神楽にストーリーを込めて踊るからこそ、見てくれる方たちにも伝わるし、文化が残っていくのです。
だから今、コロナ禍ですべての公演を中止すれば三条神楽にある各々の物語、そしてオリジナリティが失われ、文化がなくなってしまう。それが、たとえ200年間続いた郷土芸能であっても。だから、続けたいんです」(三上)
コロナ禍における「ハレとケ」を担うために
▲これまで三条神楽は、三条市の非日常のひとときを演出してきた。
これまで、地域のつながりを担うお祭りや神事といった非日常での場をハレ、普段の日常をケとする「ハレとケの生活様式」が歴史上長く続いてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、日常と非日常との垣根がなくなり、不安な日々を過ごしている方が増えています。
さらにこれからの社会では、新型コロナウイルス感染症と共存する新しい生活様式を求められる中で、三条神楽のような郷土芸能にこそ、新しい日常を取り戻すヒントがあると三上さんは期待を込めます。
▲三条神楽に関わるメンバーによって、コロナ禍での文化の可能性について議論する。
「お祭りって、全世代が関われる唯一の行事なんですよね。たとえば、三条神楽の練習には、下が幼稚園児から上は80代まで全世代が関わっています。
こうした活動に関わることで、幅広い世代の人と関わる機会になりますよね。隣人の顔が見えない希薄な関係性よりも、今ならソーシャルディスタンスを守りつつニコニコと隣のかたと会話しながら一緒に物事を楽しめれば、新しい日常をポジティブに捉え、取り戻せることにもつながるはず。
昔ながらの地域の良さをお祭りから享受しながら、コロナ禍における新しい日常を考えることも三条神楽は担えると思うんです」(三上)
三条への思いと疫病を乗り越えた先を願う
▲絵馬のイラストを喜んでもらえるよう細部までデザイン性にこだわる。
今回、三条神楽保存会に寄附してくださった方には、疫病退散を願かけた絵馬を用意しています。三条市で走るバスや三条鍛冶道場でも馴染みがある「宝剣作の舞」を絵馬にイラストとして描く、はじめての取り組みです。
「宝剣作の舞は、三条という言葉の由来でもある刀匠の三条宗近が、京都で疫病が蔓延したときに天皇の命で疫病を取り払うためにつくられた、湾曲の日本刀についての実話がもとになっています。
地域一体となって新型コロナウイルスを乗り越えていくために、三条と職人、神事に疫病退散。たくさんの願いを込めた絵馬をお渡ししていきたいです」(三上)
はじめて郷土芸能にふれる方たちにとって、また三条神楽を守り続けた方たちにとっても、共通のウイルスに立ち向かうためには、地域社会での協力は必要不可欠です。プロジェクトを通して、市内の文化を楽しみ、明るい三条市の未来を叶えるためにご支援のほどお待ちしております。
【プロジェクト期間】
・2020年10月1日まで(本プロジェクトは終了しました。)
【目標金額】
・350,000円
・支援額 448,000円
・達成率 128.0 %
【リターン】
・2000円以上の寄付につき、450円相当の絵馬(1枚)をお届けします。
*絵馬は限定500枚となります。
【お問い合わせ先】
三条神楽保存会
担当:三上正行
連絡先:sinmei@ceres.ocn.ne.jp
場所:神明宮
執筆・写真:NCL三条 水澤 陽介
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